前回のおさらい
前回は「痛みと閾値」というテーマで、痛みの感じ方を左右する2種類の閾値についてお話ししました。
- 刺激がある強さを超えると痛みを感じるラインを「閾値」という
- 「疼痛閾値」は痛みを感じ始める値で、個人差はあまりない
- 「耐痛閾値」はどこまで耐えられるかの値で、個人差が大きく、体調や気分によっても変化する
今回は、この耐痛閾値を左右する具体的な要因について、「下げてしまう要因」と「上げてくれる要因」の両面から掘り下げていきます。
閾値を下げてしまう要因
耐痛閾値が下がると、これまでなら気にならなかった刺激でも「痛い」と感じやすくなってしまいます。閾値を下げる要因には、次のようなものがあります。
- 痛覚過敏やアロディニア
- ストレスや不安、孤独感、抑うつ
- 社会的地位の喪失や経済的な問題
- 存在意義の喪失
体の状態だけでなく、心理的な不安やストレス、さらには「役割を失った」「生きがいがない」といった社会的・精神的な要因までもが、痛みの感じ方に影響することがわかります。これは以前ご紹介した「全人的苦痛(トータルペイン)」の考え方ともつながっています。
閾値を上げてくれる要因
反対に、耐痛閾値を上げる、つまり痛みを感じにくくする方向に働く要因もあります。
- 的確な治療
- 心理療法やカウンセリング
- リラックス、マッサージ、スポーツ
- 趣味、創作活動、人との交流
適切な医療的アプローチはもちろんですが、それだけでなく、心身をリラックスさせること、好きなことに打ち込む時間、人とのつながりを持つことも、痛みを和らげる力になるのです。
「気の持ちよう」では片づけられない
「痛いのは気の持ちようだ」という言葉を耳にすることがありますが、ここまで見てきたように、痛みの感じ方にはストレスや孤独感、生きがいの有無といった要因が実際に関わっています。
つまり、痛みを和らげたいときには、痛み止めなどの治療だけでなく、不安や孤独感を減らすこと、生活の中に楽しみや人とのつながりを持つことも、立派なアプローチのひとつだといえます。
まとめ
- 耐痛閾値は、体だけでなく心理面・社会面の要因からも影響を受ける
- 閾値を下げる要因:痛覚過敏やアロディニア、ストレス・不安・孤独感・抑うつ、社会的地位や経済面の喪失、存在意義の喪失
- 閾値を上げる要因:的確な治療、心理療法やカウンセリング、リラックスやマッサージ、趣味・創作活動・人との交流
- 痛みのケアには、治療だけでなく心理的・社会的なサポートも大切
痛みは体の問題であると同時に、心や暮らし方とも深く結びついています。気になる痛みがある方は、我慢せずに、まずはかかりつけの医師や医療機関に相談してみてください。

