前回のおさらい
前回は、「痛みが体と心と生活に及ぼす影響」というテーマで、痛みを我慢することのデメリットについてお話ししました。
- 急性の痛みは心拍数・血圧の上昇や筋肉の緊張など、体に緊急反応を引き起こす
- 慢性痛は不眠や食欲不振を招き、痛みがさらに痛みを呼ぶ「悪循環」に陥りやすい
- 痛みは仕事や家事、心の状態にも大きく影響する
- 痛みを我慢してもメリットはない
今回は少し視点を変えて、「同じくらいの刺激なのに、痛みの感じ方には人によって差がある」のはなぜかを、「閾値(いきち)」というキーワードから見ていきます。
「閾値」とは?
刺激が「この強さを超えると痛みを感じる」というレベルのことを、閾値といいます。
つまり、閾値が低い人ほど、ちょっとした刺激でも「痛い」と感じやすくなります。反対に閾値が高い人は、同じ刺激を受けても痛みとして感じにくい、ということになります。
この閾値には、実は性質の異なる2種類があります。
疼痛閾値──「痛みを感じ始める」ライン
ひとつめは疼痛閾値です。
これは、痛みを感じるかどうかの境目となる値です。「これくらいの刺激で、そもそも痛いと感じ始めるか」を示すラインだと考えるとわかりやすいでしょう。
疼痛閾値の特徴は、個人差があまりないということです。人によって多少の違いはあっても、「この強さの刺激なら大体の人が痛みを感じ始める」というポイントは、比較的そろっているのです。
耐痛閾値──「どこまで耐えられるか」のライン
もうひとつは耐痛閾値です。
こちらは、どのくらいの痛みまで耐えられるかを示す値です。痛みを感じ始めたあと、「どこまでなら我慢できるか」の限界ラインといえます。
耐痛閾値には、疼痛閾値とは対照的な特徴があります。
- 個人差が大きい
- 同じ人でも、体調や気分などによって変わる
「今日は痛みに敏感だな」「体調がいい日は少しくらい痛くても平気」といった感覚の変化には、この耐痛閾値が関わっています。
二つの閾値の違いを整理すると
- 疼痛閾値:痛みを感じ始めるかどうかの値/個人差はあまりない
- 耐痛閾値:どこまで痛みに耐えられるかの値/個人差が大きく、体調や気分にも左右される
同じ刺激を受けても「痛い」と言う人と言わない人がいたり、同じ人でも日によって痛みの訴え方が違ったりするのは、この耐痛閾値の変化が大きく関係しているのです。
まとめ
- 刺激がある強さを超えると痛みを感じるラインを「閾値」という
- 「疼痛閾値」は痛みを感じ始める値で、個人差はあまりない
- 「耐痛閾値」はどこまで耐えられるかの値で、個人差が大きく、体調や気分によっても変化する
- 同じ痛みの刺激でも、耐痛閾値の違いによって感じ方や訴え方が変わってくる
「大げさに痛がっているのでは」と感じる場面があっても、それはその方の耐痛閾値が下がっているサインかもしれません。次回は、この耐痛閾値を下げてしまう要因・上げてくれる要因について、詳しく見ていきます。
気になる症状がある方は、ひとりで抱え込まず、まずはかかりつけの医師や医療機関に相談してみてください。

