引き続き「痛み」についてお話ししていきます。
前回のおさらい
前回は、自律神経と痛みの関係について学びました。
- 交感神経優位の状態は痛みを増強させる
- 副交感神経を優位にすることで痛みが和らぐ
今回は、ストレスや喜びが痛みに与える興味深い効果について見ていきましょう。
ストレスで痛みが鈍くなる不思議
ボクシングの試合中に怪我に気づかない理由
ボクサーが試合中に怪我をしても戦い続けられるのは、強いストレス状態で体内の鎮痛システムが働くからです。
体内で起こる鎮痛メカニズム
ストレスや興奮状態になると:
- ノルアドレナリンの放出
- 交感神経が活発になる
- 神経細胞への痛み情報の伝達が抑制される
- 内因性オピオイドの放出
- 脳から「体内モルヒネ」とも呼ばれる物質が放出
- βエンドルフィンも同時に放出
- 強力な鎮痛作用と多幸感をもたらす
これは生命を守るための本能的な仕組みで、危険な状況で痛みに邪魔されず行動できるよう進化してきたものです。
喜びも痛みを和らげる
快感が痛みを軽減する仕組み
空腹が満たされたとき、仕事が成功したとき、スポーツで勝利したときなど、喜びを感じる瞬間にも痛みは軽減されます。
ドーパミン神経系の働き
- 快感や喜びを感じるとドーパミンが放出される
- ドーパミンが内因性オピオイドの放出を促進する
- 結果として鎮痛効果が得られる
日常生活への応用
ストレス管理の重要性
- 適度なストレスは鎮痛効果があるが、慢性ストレスは痛みを悪化させる
- リラックス法や趣味の時間を大切にする
小さな喜びを見つける
- 好きな音楽を聴く
- 美味しい食事を楽しむ
- 達成感を味わえる小さな目標を設定する
まとめ
痛みと感情は密接に関わっており、体には自然な鎮痛システムが備わっています。
重要なポイント:
- 強いストレスや興奮時には体内鎮痛システムが働く
- 喜びや快感も痛みを軽減させる効果がある
- 日常の小さな喜びや適切なストレス管理が痛み対策になる
重要な注意点 慢性的な痛みや強い痛みが続く場合は、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが大切です。